とうのむかしに壊れていたのです。
壊れていたのに、
其れも気付かぬ程に愚鈍であったのです。
否、
壊れていたから愚鈍ですらないのでしょう。
譬え気付いた処で、
とうに手の施し様もなかったことでしょう。
皹入って
皹広がり
皹目細かに
網目の様に
布目の様に
色失せる様に、こなごなに。
こなごなに為りながらも、
惰性で塊を保つていたに過ぎないのです。
あちこち崩れても、
崩れたことにさえ気付かず、
譬え気付いても
其れさえ認識できる筈もなく
とうのむかしに壊れて、
こなごなに崩れていく、
其の途中でしかなかったのです。
だから、
貴方が触れたから
壊れてしまったのではありません
貴方が触れた傍から、
崩れてしまった処で、
どうと云うこともないのです。
貴方が触れずとも、
遠からず崩れていた筈なのですから。
だから、
どうか、
お気遣い無き様に。